夢を見た・・・・・・
 一人の男の人生を見るような夢・・・・・・
 妙にリアルで、鮮明な夢だった。
 それはまるで一つの長い物語のよう・・・
 でも、やはり短い詩のようでもあり・・・
 すごくリアルなのに時間の流れがおかしくて、自分の事のようなのに私の感覚は浮いていて・・・・・・やはりこれは夢だと気づく。
 それは音楽のように綺麗な物語だった。
 素敵な夢・・・・・・みんなの幸せを願う真っ直ぐな少年の物語。
 そして、力強い夢・・・・・・みんなの幸せの為に戦う、青年の物語。
 でも、哀しい夢・・・・・・夢を失った男の・・・・・・それでも終わらぬ物語・・・・・・
 そして、物語の終わり・・・・・・真っ直ぐな少年も、戦い続けた青年も、夢を失った男も…そこに辿り着く。
 大地に突き立つ無数の剣・・・・・・荒野を埋め尽くす剣の群れは、まるで墓標のように佇む。
 乾いた風の吹く、寂しい荒野・・・その中心に彼は立つ・・・・・・

 それでようやく気がついた。
 その長い物語は―――――――――ただの短い詩だった

 朽ちぬ混沌と無限の剣



 時は2月、生命の沈む季節は新たな命を育むために胎動している。
 そう、新たな勝者を生み出す為の儀式が行われる時節…それが今だ。

 しかし、今宵の話は筋違いの閑話。
 出会う時に在らず、出会うべきで無かった両者徒労の不毛な争い。

 第7の参加者(マスター)も揃わぬ内に、儀式(ゲーム)に紛れ込んだ間違い。

 では語ろう。
 宵闇が街を侵し、光を翳らした頃に行われた混沌の獣群と果てぬ剣製の戦いを…

       ◇      ◇      ◇


 夜を歩く・・・・・・言い得て妙なフレーズだと思う。
 実際は就業時間が終わり、人の居なくなったビル街を歩いているだけで、夜というのはそのシチュエーションに過ぎない。
 だけど、そこに広がるビルの群れよりも、私にとっては表現の上での夜の方が存在感を感じる。
 私の感覚だけで感じている、夜と呼ばれる闇・・・・・・だけど、その存在は巨大建造物で埋め尽くされる街や・・・私自身を包み込んでいる。
 それはまるで、魔術と呼ばれ、秘匿されることを義務づけられた人間社会の闇に似る。
 だから、魔術師である私、遠坂凛は夜を歩く。街を、人の道を歩いているのではない、夜という魔術師(ヤミ)を歩いているのだ。

 「アーチャー・・・・・・」

 闇夜に呟く。私以外居ないこの場所では他の人の目から見たら独り言のように聞こえるだろうその言葉に、返事をする者がいる。

 『なんだ、凛?』

 返事は男の声。
 赤い外套をまとった長躯の男であり、浅黒い皮膚と白髪という、日本では異様な姿の青年。
 それもそのはず、彼はサーヴァントと呼ばれる使い魔なのだから。いや、使い魔などという枠組みには属さないだろう。なぜなら、彼は人間である私よりも高位の存在の精霊である。
 それを、聖杯の助力を受けて、仮初めの召喚者である私が従えているのだ。なら、その関係は使い魔と言うよりも、目的を同じにする同士と言える。
 ちなみに、今は受肉をしていない状態『霊体』になっているために姿を見ることが出来ない。
 しかし、ひとたび受肉してこの世に現れれば、その凄まじい戦闘力でいかなる敵をも屠り去る聖杯戦争最大の武器、サーヴァントとしての力を発揮する存在だ。
 だけど、どんなにすごい存在だろうと、今は私の従者として召喚されている。私は主人として彼に接する。

 「ねぇ、これってやっぱり・・・そう言うことよね?」

 私の要領を得ない質問にアーチャーは頷く気配を返す。

 『ああ、こんな時期にこれだけの魔力を集めようとするのは聖杯戦争がらみ以外あるまい。』

 アーチャーの言った魔力を集めるというのは目の前の状況を指した言葉だ。
 そこには、意識を失った人が幾人も倒れている。10人近くはいるだろうか?
 全員、何かしらの魔術で魔力・・・つまりは生気を吸われて昏倒しているのだ。別段、命に別状はなさそうだが・・・術者のマナーがなってないのは度し難い。
 死ななければ良い、と言うような無茶な吸収の仕方をしているのだ。魔術を知らない一般人にそこまでするのは異常だ。正直、常識を疑う。・・・いや、そもそも一般人を対象にした魔術自体が私の流儀では重大なマナー違反だ。
 しかし、犯人がこうまでして魔力を集める理由もわからなくは無い。

 サーヴァントは召喚者であるマスターの魔力を使い戦う。魔力はサーヴァントにとってガソリンのようなものだ。あればあるほど長時間戦闘ができ、強力な攻撃をエネルギー切れの心配なく連続で繰り出せる。
 つまり、今この冬木の地で大量の魔力を必要とするのは、サーヴァントなどという強力な兵器を手にしているマスター以外ないのだ。

 なら、結論は出たも同然。

 「まったく、人の土地で好き勝ってやってくれちゃって・・・・・・落とし前はつけてもらわなくちゃね。」

 当然こんな礼儀知らずなよそ者をほっといてやれるほど私は温厚じゃない。そりゃあもう、めいっぱい後悔させてやる。

 幸い、魔力の残塊が道しるべのように続いている。これだけの大事をやらかしたのだ、当然といえばそれまでだけど。私に尻尾を掴ませたのが運の尽きというやつだ。

 「アーチャー、行くわよ。」

 何処にとか何をしにとも言わずに、私は歩き出す。だけど、彼にも私の意志は伝わっている様だ。

 『了解だ。』

 短いが、了承の返事が返ってくる。その後は何の気配も出さずに私について来る。

 しかし、このアーチャーと言うサーヴァント、悪い奴ではないのだが、いまいちキャラが掴みづらい。
 召還の時は私を子供だと馬鹿にした態度をしていたが、私の魔力量を見るとすぐに優れたマスターと認めて節度ある態度を取る。…まあ、殊勝でよろしいのだが。
 英雄とまで呼ばれた人物なんだから、もう少しオーラ・・・っというか、威厳みたいなものがあると思ったんだけど・・・そうでもない。
 魔力量は半端じゃないし、ものすごく鍛えられた身体をしているけど、別段態度は普通の人・・・・・・
 俗世のことなど気にしない浮世離れした人かと思えば、意外と細々としたことに気が回るいい奴だし・・・・・・サーヴァントってみんなコイツみたいな奴なのかしら?
 さらに軽い記憶喪失なんてオマケもついて、自分の正体がわからないときている。
 一応記憶が戻るよう色々試してみたけど、今のところ効果なし。戦闘には支障はないと本人の弁もあるので、現状は保留だ。

 ・・・まあ、その話はさておき。
 今は偵察の成果でもある、敵チームの足取りを追うのが先決だろう。この魔力の残塊を追っていけば、こんなふざけた事をした奴にたどり着く。
 さて、人様の土地を荒らした代価は、聖杯戦争開始前のリタイアと言う屈辱で支払ってもらおう。

 私は再び夜の街を歩き始めた。
 先ほどと違い、目的は偵察ではなく殲滅。
 ふざけた倫理観を持っている競争相手を蹴散らすためだ。
 もう、頭の中はそれでいっぱい。
 人知を超えると言われるサーヴァント同士の戦闘がついに見れるという昂揚感と、倒した敵にどのような制裁を与えてやろうかという加虐心・・・・・・

 ――――――――――そして、負ければ死ぬというリアルな緊張感。

 アーチャーの実力を疑っているわけではない。
 正直、人知を超えると言うサーヴァントが想像していたよりも人間っぽいのには拍子抜けしたが、彼の黒いライトアーマーの下にある、しなやかで強靭な肉体と、鷹のような瞳・・・・・・そして、その内から溢れ出る高濃度の魔力が、アーチャーというクラスに込められた英雄の強大さを知るのには十分すぎた。

 だけど、それは敵にも言えることだろう。
 サーヴァントと言う最強の存在である7人がぶつかり合うのが冬木の聖杯戦争。
 最強同士がぶつかると言うことはまさに矛盾……いや、この世に形を持って存在している時点で矛盾などありえない。その決着はどちらかの敗北を意味するからだ。
 なら、私の相棒、最強であるはずのアーチャーも・・・・・・
 いや、止めよう。最悪のケースを想定するのは必要なことだが、思考がマイナスに向かっていては勝てる戦いも勝てない。
 今は全力で敵を倒すことを考えなくちゃ。

 そんなことを考え、魔力の残塊をたどっていた私は、新都の中央公園の前を通り過ぎようとしていた。

 そして――――――――ぞくりッ

 全身を襲う緊張感。

 「え?」

 突然の違和感に思わず声をあげ、思考を中止する。
 体中いっぱいに感じる違和感・・・背中に流れる冷や汗・・・
 殺意だとか、敵意などではない・・・それは単純な脅威・・・
 私に向けられた害意というよりは、この空間全体を包む悪意と言った方がいい。
 恐るべきモノがいる…それを本能が警告しているのだ。
 最初に感じたのが第六感・・・次にそれを感知したのは嗅覚だった。

 「なに…これ?」

 思わずそんな感想が口から出る。
 だってそうでしょう・・・あたりに立ち込めるのは鼻をつんざくほどの血の香り・・・・・・
 そして、むせ返るほどの獣臭・・・まるで密林に迷い込んだような錯覚を覚える。

 そして、夜の闇はその色を変えた・・・先ほどまでの、何かを隠しているような・・・神秘を包み込むような夜の闇ではない。
 今、この闇の中には何者かがいる。そう物陰に、足元に、背後に・・・何者かが潜んでいるのだ。
 血に飢えた獣・・・獲物を狙う瞳・・・・・・影の捕食者の住む闇がある。

 怖い・・・そう、私は闇を恐れた。この・・・何かを潜ませた暗い闇を・・・

 「アー・・・チャー・・・」

 彼の名を呼ぶ、震える声で。私の耳にすらか細くしか届かぬそれを、彼は聞き取れたのだろうか?

 「・・・・・・」

 無言・・・無返答・・・聞こえていないのか、彼もこの影に潜む脅威に怯えているのか?
 どちらにしろ、沈黙ほど人の恐れを煽るものは無い。情けない事に、その事実が私の混乱を加速させる。
 嫌だ、負けたくない。私はこの聖杯戦争に勝たなきゃいけない。こんな事位でつまずけない。怖がっていられないッ!!
 とにかく何かを考えなくては。人が恐慌に陥るのは考える事を放棄するからだ。
 思考を手放すなッ!!考えろ。間違いなく敵はいる。
 闇に潜む・・・・・・アサシンのサーヴァント?

 『――――――食事中のようだな…』

 私の思考に割り入ってアーチャーの呟きが聞こえた。

 「え?」

 正直何を言っているのか解らなかった。食事中…誰が?何を?
 いや、そんなことよりもまるで状況の説明になってないことのほうが問題だ。

 「ちょっと、アーチャー!? 一体どう言う意味よッ!!」

 言いながらアーチャーがいる空間を睨み付ける。
 もちろん、明確な説明を要求する為だ。

 『ふむ、いわゆる吸血鬼と言う奴か・・・君たちで言うところの死徒と呼ばれる者がこの公園にいる。』

 「・・・なんですってッ!!」

 思わず叫ぶ。それほど、アーチャーが淡々とした口調で告げた事は、とんでもないことなのだ。

 「どう言うことよッ!? 死徒なんてクリーチャーのなかでも最上級のバケモノじゃないッ!!」


 吸血鬼――私達魔術師が死徒や超越種と呼ぶ者は、伝承や民話に語られる吸血鬼(ソレ)と似る。
 曰く、超人的な力を持ち、不死身の肉体を誇る。
 曰く、神の反骨者として朝日の前に塵と消える。
 曰く・・・・・・人の生き血をすする。

 「冗談じゃないわッ!! なんだってそんな奴がこんな所に・・・ ッ!?まさかサーヴァントッ!?」 

 考えられないことじゃない。
 サーヴァント・・・聖杯戦争に召ばれる英霊は剣術や魔術など、戦闘に秀でた者のことだ。なら、それは英雄に限られたことじゃない。

 反英雄・・・英雄と対峙する者、それもまた力を持つ者だ。
 英雄が英雄と呼ばれるのは、何も生まれながらではない。彼等の戦いが人々に希望を呼び、その功績を持って英雄と呼ばれたからだ。
 ならば、彼等の功績に必ずある者。彼等を善とするならば不文律として存在する悪。
 例を挙げるとすれば、ニーベルゲンの歌における英雄『ジークフリート』に退治された悪竜『ファフニール』とか、源氏の大将『源頼光』に退治された鬼の親玉『酒呑童子』等である。
 まあ、要するにアン○ンマンに対するバイ○ンマンのようなもの。
 それが反英雄と呼ばれる悪である。
 英霊とは人々の信仰によって神格化した者の事だ。ならば、英雄は希望と理想を…反英雄は恐怖と侮蔑をもって形を得る。
 なら、欧州で発生した伝承でありながら、この極東の地においても恐れられる『吸血鬼伝説』…ソレもまた人々の幻想を形にしたサーヴァントと言える。

 「ヴァンパイアのサーヴァント…ポピュラーなところでワラキアのブラド・ツペシュかしら? 吸血鬼伝説の中でも凶悪だし、なにより日本じゃ有名なドラキュラ伯爵だしね。」

 『凛…』

 「いや、でもそれはただのウワサで、ブラド自身が超人的な力を持っていたわけじゃ……でも確かワラキアでは伝承通りブラドが蘇って城下町を死滅させたと言う話もあったし……ハンガリー軍とトルコ軍の仕業なんて言われてるけど、そんなの教会が良く使う情報操作みたいなもんでしょうし…綺礼あたりに確認とって見れば…」

 『凛?』

 「いや待て、吸血鬼伝説なんて世界中にごまんと在るわ…決めつけるのは早いかもしれな…」

 『凛ッ!!』

 突然、目の前に大きな手が現れひらひらと動く。

 「え!? な、なによ!?」

 思わず振りかえると、そこにはすでに実体化したアーチャ―がため息顔で立っていた。

 「まったく君は…考えこむのは勝手だが、人の話しを最後まで聞いてからにしてくれ。」

 ふう…と、今度は口に出してため息を吐く。

 「な、なによ? じゃあ、アンタは相手の正体が分かってるって言うの?」

 恥ずかしかったのとムカツキが合わさって、つい睨み顔で聞き返す。

 「いや、正体に関しては残念ながら不明だ。しかし、君が闇雲に思案するよりは解る事も有る。」

 と、アーチャ―は私の睨み顔を涼やかにかわすと、皮肉を含んだ余裕の笑みで返す。

 「このッ………まあいいわ」

 …なんだか、普段通りのこいつの態度を見てたら緊張が解けちゃった。

 そうだ、こんな事ぐらいで動揺するのは私らしくない。どんな時でも優雅たれ、と言うのが遠坂の家訓だ。
よし、おふざけもここまで。

 「…で、わかることって何?」

 私は、聖杯戦争を戦うマスターの顔で、己のサーヴァントに聞いていた。

 「ああ、まずあれはサーヴァントではない。」

 「サーヴァントじゃない?…て言うことはマスター?」

 さすがにそれは考えていなかった。

 「その可能性も無くは無いが、周囲にサーヴァントの気配は無い。おおかた、人肉欲しさに山から下りてきた古狸の類だろう。聖杯戦争とは関係ないイレギュラーだ。」

 「イレギュラーって、そんなわけ無いでしょうッ!! この土地に死徒なんて現れたことなんて無いんだから。それにこの時期に冬木に来た異端が聖杯戦争がらみじゃないなんて考えられないでしょう?」

 「ふむ、正論だな…しかし、それならばどうする? 仮にマスターだとしても、相手が死徒ならば、存在するだけで命を狙ってくれる便利な組織があるが…」

 …たしかに、教会なら死徒が出たと知ればすぐに対応するだろう。

 「ええ、でもダメね…もともとあいつ等こんな極東の事件なんて気にしてないでしょうし…もし騎士団なり代行者なりを寄越してきたら、それは死徒を退治するのが目的じゃなくて聖杯を掠め取るのが目的でしょうからね。」

 そう、聖杯なんて仰々しいアーティファクトの争奪戦なのだ。本家である教会が関心を持たないほうがおかしい。実際、今まで行われてきた聖杯戦争で教会が介入した事件がいくつかある。故あらば、聖杯を掠め取ろうと言うつもりだろう。彼らに任せるのは得策ではないだろう。
 それに、正直に言えば冬木の管理者として化物の侵入に気づかなかったことが悔しくて、私の預り知らぬところで出てしまった犠牲者が情けなかった…
 こんなの、心の贅肉かもしれないけど、見てしまった以上、放って置けないのが私の性分なんだから仕方がない。

 「アーチャー、行くわよ。」

 私はやはり目的も言わず歩き出す。後ろでは、何処かわざとらしいため息とともに、私の従者が霊体に戻って付いて来る。

 「何よ、文句ある?」

 『いや、忠告ならダースほどあるが、文句はない。もともとゲームに紛れ込んだイレギュラーだ、参加者が正すのも務めだろう。』

 やはり軽い皮肉とともに答えるアーチャー。短い付き合いだけど、こいつとのこう言う会話は嫌いじゃない。…だって、さっきまではあんなにも恐ろしかった闇を、こいつとなら恐れずに歩いていく自分がいるから。


 焦らず、それでいて確実に、恐れず歩を進める。公園の中央広場、敵がいるであろう場所に。

 「・・・」

 歩きながら、魔術を組み上げる。
 ―――――ゆっくりと、精神で編まれた糸が公園中に敷き詰められていくイメージ・・・簡易な魔術だが、索敵には十分の効果を出す。
 大丈夫、もう園内に人はいない。

 ・・・いや、何が大丈夫なものか。人が居ないのではなく、居なくなったのだ。もともと人気のない場所だったが、今は人がいて良い場所ですらない。正体不明の化け物がひしめいて、公園は立派な異界となっていた。

 「・・・」

 虎の子の宝石を用意する。何が起きても対応できるように魔術回路は起動済みだ。魔術だけではなく全身の神経を鋭敏にして来たるべき戦いに備える。
 ・・・想定外の相手ではあるけど、私の聖杯戦争の始まりを告げる戦いだ。必ず勝つ。

 私の呼吸が…覚悟が整った頃。雑木林は途切れ、広場が見える。

 「行くわよ・・・」

 私はそう呟くとともに広場へと足を踏み出した。


 広場には立ちこめる霧…響き渡る咀嚼音…
 星も見えぬ曇天の下では、雲間から照らされる月光のみが薄く世界に輪郭を映す。
 その薄明かりの中、咀嚼音だけが木霊する。
 グチャ、グチャ…
 肉を潰し、骨を砕き、ただ飢えを癒すために飲み下す者。
 月明かりの下、私は――――――黒い獣に出会った。



 あとがき

 中途半端なところですが続きます。


もし感想などあったらコメントを頂けるとうれしいです

 戻る  中編へ